最近気になる世界の「ジュエリー」その12

職人が集団で製作した大工房の時代

神と天国と地獄を振りかざす教会からの圧迫と、東からの異民族の流入に悩まされた千年に心の底からうんざりした人々は、古代ギリシャ・ローマを範とする人生を求め始める。

これが始まったイタリアではそれをリナシメント、再生と呼んだ。やがてその影響は北方のドイツやオランダに、さらにはフランスまで及び、ルネサンスとして定着した。
ルネサンスは都市文明であり、それを支えたのは中世の教会に代わる王侯貴族と都市の上流富裕階級であった。
イタリアのメディチ家、ドイツのフッガー家などがその代表格である。

最近気になる世界の「ジュエリー」その11

これら諸民族が使った装身具は装飾を伴ってはいるものの、本質的には実用品として作られたことが特徴で、フィビュラも衣服の合せ目を留めるためのボタンの代わりの実用品であった。
そのあたりが、完全に文明化する以前の民族の装身具の状況を示すものとして面白い。

印象的なのは、平面に研磨したガーネットを有線七宝のように金線の枠に合わせてカットし嵌入してあることで、接着剤には微粒子状の砂と卵白を使っている。
また鈍い鼠色をしたニエロも特徴的で、実例はむしろ七宝よりも多いだろう。

こうしたジュエリーのほとんどはキリスト教化のなかで作られなくなり、その後の[ロマネスク]、[ゴシック]の時代を通じてほぼ完全に忘れられたのは残念である。
これらが復権してくるのは、19世紀のリバイバルの時代を待たねばならなかった。

最近気になる世界の「ジュエリー」その10

古墳から発掘された民族色濃い装身具1939年、ロンドンの北東約100キロのサットン・フーで古墳が発掘された。
ヴァイキングなどの海洋民族特有の船葬墓で、木造船に積まれていたのはメロヴィング朝のコインのほか大量の装身具、大きな肩飾りやバックル、刀の柄飾りなどである。
多くのものが金製で、宝石類はガーネットが主に使われている。

最も有名な全長が13センチもあるバックルや、グリッピング・ビーストなどのデザインのものはキリスト教と接触する以前の民族のデザインでありジユエリーであったと推測される。
墳墓そのものは、650年前後のもので、サクソン族の王エスルビアのものと言われる。

最近気になる世界の「ジュエリー」その9

諸族による王国の興亡から統合への時代

ローマ帝国辺境の民族の平安は東から侵入してきたフン族によって破られ、多くのゲルマン族が西方のローマ帝国領内に移動したことは民族大移動として歴史に残る。
アングル族やサクソン、ヴァンダル、フランク、ランゴバルト、ゴートなどゲルマン諸族は東西に分裂した帝国の半分、西ローマめがけて侵入し、次々と国を建てては滅びていった。

文化史的には、その過程のなかでゲルマン族は少しずつキリスト教化してゆく。
やがてシャルルマーニュ大帝のカロリング朝判やオットー大帝の神聖ローマ帝国の時代となり、神と天国と地獄をテーマとする美術を作ったことは前項の通りだ。
ここでは、キリスト教化以前の、そうした民族のジュエリーを見てみたい。

最近気になる世界の「ジュエリー」その7

中世時代のジュエリーに類似する金属工芸の主なものは、教会の荘厳具である。
聖遺物とは聖人や殉教者などの遺品や身体の一部などで、その人物と同じ力が宿るとして崇敬の対象となる。
これを収納する入れ物が聖遺物箱で、十字架や本、カバンのようなものなどさまざまな形がある。

英語ではマンストランスと呼ばれるが、美術館などでのんびりと眺めていて、突然十字架のまんなかの空洞に人間の手の骨がまるごと入っていることがわかって仰天した方もいるだろう。
教会はこの聖遺物箱を貴金属で作り、多くの宝石類や七宝で飾った。

最近気になる世界の「ジュエリー」その8

そのほかにも、教会の聖壇の回りや十字架、照明具などに膨大な金銀宝石が使われている。
野の百合などどこにもないのが教会である。
一方、人々が使ったジュエリーらしき可憐なものに、アンセーニュがある。
聖地巡礼記念バッジとも言うべきもので、ルルドなどの聖地を巡る巡礼が記念に買い求め、帽子などに縫い付けたものだ。

王侯用の絢燗豪華な金銀製もあるがほとんどは鉄や青銅製で、装身具と言うよりもいかに敬慶な信者であるかを示すものであった。
教会の強欲と信者の可憐さとが、何よりもよく対比されたものと言えよう。

最近気になる世界の「ジュエリー」その6

豪華絢燗な教会の荘厳具の数々

敬虔なキリスト教徒の方からは怒られるかも知れないが、どう見ても中世における教会の行為は目に余る。
簡単に言えば、教会が神と天国と地獄を使って人々を惜剛したとしか思えないということだ。
人々が気にしたのは、王侯貴族なども含めて、いかに神を崇拝し教会から怒られないはうに過ごすかということであった。

人々の奢修は神の嫌うところであり、「ソロモンの栄華も野の百合にしかず」判とばかり質素を旨とさせた。
その一方で坊主どもは教会や神を荘厳にし、それによつてさらに人々を神の僕とすることに全力を傾けた。

最近気になる世界の「ジュエリー」その5

宗教が人々を脅かした鴫梱ミドル・エイジすなわち中世という言葉は、17世紀にできたものである。
ルネサンスが終わりかかった頃、ルネサンスと古代ギリシャ・ローマの時代の問に挟まる時代、それを総称して中世と呼んだ。
476年の西ローマ滅亡から15世紀までの千年ほどを言うわけだが、ともかく長くまた混乱している。

ここでは大胆に中世のふたつの面、つまり教会が神を使って人々を脅かし続けた面と、異民族が流れ込んで人種的に混乱した面とから、ジュエリーを見てみる。

最近気になる世界の「ジュエリー」その4

もうひとつの特徴は色石の多用だが、東方諸国との交易がコンスタンチノープルを経由して行われた結果であろう。
色石は帝室の人々の衣服に縫い込まれたりもして使われ、七宝とあいまって、ビザンチンのジュエリーをこの上なぐカラフルなものにしている。

西ローマ帝国がゲルマン民族大移動によって大きく破壊されたのに比べて、ビザンチン文化はまったく新しいものは創造しなかったが、ギリシャ・ローマの古典的な色彩を保持して後世に伝えたこととなり、西欧の中世やルネサンスにまで大きな影響を与えた。

最近気になる世界の「ジュエリー」その3

そのほとんどはクロワゾネと呼ばれる有線七宝であり、金線による枠の中をきわめて鮮明な色の七宝で埋めることで聖人や天使、キリスト像などをカラフルに描いたジュエリーが数多くある。
多くが平板な板状のものであり、それを蝶番などで組み立てて王冠やブレスレットを作っている。

この表現が平面的であることと、セットする色石や真珠のパターンが幾何学的となり、ひいては縦横に置かれた宝石が十字架の意味を持つようになるというところに、ビザンチン工芸のキリスト教色の強さが見える。

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